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蜜柑の木

  • 執筆者の写真: Cielo
    Cielo
  • 2021年6月16日
  • 読了時間: 1分

更新日:2021年7月13日

蜜柑の木のこと


「今年はようけ実がなってな。

 たぶん、千個以上はなった。

 食べきれんから近所中に配った」


そういって実家の母から

蜜柑が送られてきたのは

去年の11月のことだった。





実家の庭に一本だけあった蜜柑の木。

背もそんなに高くないし、

千個も実がなったとは信じがたかったが。

母がそういうのだから、相当な数はなったのだろう。


大きさも不揃いで見た目は今ひとつだけど、

しっかり甘くて酸っぱくて、おいしい蜜柑。

毎年この蜜柑が届くことを私は心待ちにしていた。


もちろん去年も。

まさかそれが、この木からいただく

最後の蜜柑になるなどとは思いもせず。




実家の蜜柑の木は、もうここにはない。

そこにあるのがあたりまえで、

いつからあるとか、いつまであるとか、

これまで考えてみたこともなかった。


変わらないものなんてないと、

知っていたつもりだったのは ただの知ったかぶりだった。


一本の蜜柑の木の喪失は。

いろんなことを教えてくれた。


実家には、もう2年も帰っていない。

今年の夏は、帰れるかなあ。








 
 
 

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